テニス界にはグランドスラムやゴールデンスラムなど様々な偉業がありますが、その中でも今回はサンシャインダブルについて解説していきたいと思います。
サンシャインダブルとはいったい何を指すのか、概要と過去の達成者をまとめてみました。
サンシャインダブルって何?
結論から先に言いますと、サンシャインダブルとは、3月に行われるBNPパリバオープン(インディアンウェルズ)とマイアミオープンを続けて制覇することを指します。
この2大会は男女ともにグランドスラムに次ぐ2番目のグレードに位置しており、一度優勝するだけでも名選手として語り継がれるレベルです。
そのグレードを2大会連続優勝するわけですから、相当難易度が高い偉業となっています。
サンシャインダブルの難易度は?
参加選手
テニスのツアー選手は、大会への参加義務というものがあります。年齢や、怪我などで免除されることはありますが、基本的には絶対に出なければならない大会というものが存在します。
インディアンウェルズ、マイアミともに、出場しなければならない大会に定められており、参加選手は基本的にはグランドスラムと遜色ないです。
必要勝利数
優勝までに必要な勝利数は、グランドスラムは128ドローなので7回となります。
一方、こちらのサンシャインマスターズは96ドロー(ドローサイズは128)となっており、上位32シードは6回、ノーシードは7回の勝利が必要になります。
サンシャインダブルの場合はそれを2大会連続でやらないといけないので、12~14勝必要になりますから、グランドスラムよりも大変ということになります。
ドロー・日程
ドロー数だけではなく、サンシャインダブルの場合ですと、グランドスラムに比べて強い選手と当たる回数が増えます。
どういうことかというと、一般的にはランキングが高い選手にはシードがつき、強い選手同士がトーナメント後半で当たるようにドローが設定されますが、サンシャインダブルは2大会に分かれている分、トーナメント後半が2回来るんですね。
例えば第1シードの対戦モデルを見ていきましょう。すべてのシードが順当に勝ち上がった場合、グランドスラムだと、
- 1回戦:ノーシード
- 2回戦:ノーシード
- 3回戦:17~32シード
- 4回戦:9~16シード
- 準々決勝:5~8シード
- 準決勝:3・4シード
- 決勝:2シード
これがサンシャインダブルを達成しようとすると
- インディアンウェルズ2回戦:ノーシード
- インディアンウェルズ3回戦:17~32シード
- インディアンウェルズ4回戦:9~16シード
- インディアンウェルズ準々決勝:5~8シード
- インディアンウェルズ準決勝:3・4シード
- インディアンウェルズ決勝:2シード
- マイアミ2回戦:ノーシード
- マイアミ3回戦:17~32シード
- マイアミ4回戦:9~16シード
- マイアミ準々決勝:5~8シード
- マイアミ準決勝:3・4シード
- マイアミ決勝:2シード
となるわけです。グランドスラムだとTOP10と戦うのは7戦中3戦ですが、サンシャインダブルとなると12戦中6戦と、半分の試合がTOP10プレイヤーになってしまいます。
日程に関しては、グランドスラムが2週間、サンシャインダブルが各大会1週間半(間に3~4日)となりますし、サンシャインダブルは3セットマッチなので、大きな差ではないと思います。
サンシャインダブルの難易度
結論、グランドスラムよりもサンシャインダブルのほうが厳しいと考えます。
上にあげた内容に加えて、グランドスラム優勝者は毎年4名必ず出ますが、サンシャインダブル達成者は出るかどうかもわからないというのも大きいと思います。
では、そんな難易度の高い偉業をこれまで達成したことのある人たちを見ていきましょう。
サンシャインダブル達成者
1991年 ジム・クーリエ
最初のサンシャインダブル達成者は、世界ランク1位在位58週、グランドスラム通算4勝を誇るアメリカのジム・クーリエです。
当時はまだ5セットマッチだったインディアンウェルズ決勝ではフランスのギー・フォルジェを4-6 6-3 4-6 6-3 7-6のフルセットで下し、マイアミの決勝ではデビット・ウィートンに4-6 6-3 6-4で勝利しました。
この勢いのまま、1991年全仏オープンを優勝し、翌年2月に世界ランク1位まで上り詰めました。
1992年 マイケル・チャン
1989年に全仏オープンを最年少で制し、テニス界を盛り上げたマイケル・チャンですが、その後はあまり目立った活躍はありませんでした。
クーリエの台頭やエドベリ、サンプラスらの活躍の前に苦労していましたが、92年のインディアンウェルズではロシアテニス界の始祖、アンドレイ・チェスノコフに6-3 6-4 7-5のストレート勝利。
マイアミでは元8位でマスターズタイトル2勝のアルベルト・マンシーニに7-5 7-5のストレート勝利を収め、サンシャインダブルを達成しました。
1994年 ピート・サンプラス
93年に世界ランク1位になったサンプラスは、その後ウィンブルドン、全米、94年全豪を立て続けに制覇し、サンプラス時代を築きました。
その勢いはグランドスラムにとどまらず、94年のインディアンウェルズではペトル・コルダに4-6 6-3 3-6 6-3 6-2で勝利。
続くマイアミの決勝ではアンドレ・アガシに5-7 6-3 6-3で勝利し、サンシャインダブルを達成しました。
1994年・1996年 シュテフィ・グラフ
女子で初めての制覇者は、グランドスラム22勝、男女唯一の年間ゴールデンスラム達成者のグラフでした。
サンプラスと同年の94年にインディアンウェルズで元世界3位のクッツァーを6-0 6-4で、マイアミでは元世界5位で、ダブルスでは18ものグランドスラムタイトルを誇るズベレワに4-6 6-1 6-2で勝利しサンシャインダブルを達成。
その2年後の96年にも、94年ウィンブルドン覇者のマルティネスをインディアンウェルズで7-6 7-6で撃破し、マイアミでは元世界ランク6位のルビンに6-1 6-3で勝利。
男女通じて初めての複数回サンシャインダブル達成者となりました。
1998年 マルセロ・リオス
98年には意外な選手がサンシャインダブルを達成しました。クレーでめっぽう強いリオスだったのですが、この2大会では手が付けられないくらい強かったです。
インディアンウェルズでは元世界4位のルーゼドスキーを6-3 6-7 7-6 6-4で破り優勝すると、続くマイアミでは最多優勝を誇るアガシを7-5 6-3 6-4のストレートで破り、サンシャインダブル達成。
この勝利でサンプラスから世界ランク1位を奪還し、南米勢初の王者に輝きました。
なお、世界ランク1位達成者の中でグランドスラム優勝が無い選手は、このリオス一人だけです。
2001年 アンドレ・アガシ
1999年に不調から復活したアガシは第2の全盛期を迎え、全豪オープンを2000年、01年と連覇。
その勢いのまま、インディアンウェルズではサンプラスに7-6 7-5 6-1でストレート勝利すると、マイアミでもギャンビルに7-6 6-1 6-0でストレート勝利を収め、サンシャインダブルを達成しました。
ちなみに、01年~03年のマイアミはアガシの独壇場で、3連覇はマイアミ最多記録。更に優勝6回も最多記録となっています。
2005年 キム・クライシュテルス
女子2人目のサンシャインダブル達成者は、ベルギーの元世界ランク1位、クライシュテルスでした。
2004年には怪我の影響で戦線離脱していましたが、ここで復活優勝。インディアンウェルズで3つのグランドスラムを獲得しているダベンポートに6-4 4-6 6-2で勝利し、マイアミではグランドスラム5勝のシャラポワに6-3 7-5で勝利しました。
この年のクライシュテルスは、その後の全米オープンで悲願のグランドスラム初優勝を飾りました。
2005年・2006年・2017年 ロジャー・フェデラー
最高のテニス選手として名高いフェデラーも漏れなくこの記録を達成しています。しかも3回です。恐ろしい…
2005年インディアンウェルズでは元1位のヒューイットに6-2 6-4 6-4のストレート勝利。マイアミではライバルのナダルとフルセットにもつれる接戦の末2-6 6-7 7-6 6-3 6-1で優勝。サンシャインダブル達成を果たしました。
続く2006年、インディアンウェルズで元世界4位のブレークを7-5 6-3 6-0のストレートで破り、マイアミでは元3位のリュビチッチにも7-6 7-6 7-6でストレート勝利。史上初のサンシャインダブル2連覇を達成しました。
間は空いて2017年、全豪オープンでの感動的な復活優勝を果たすと、インディアンウェルズで同胞のワウリンカに6-4 7-5で勝利し歴代最多5度目の優勝。続くマイアミではナダルに6-3 6-4でストレート勝利を収め、サンシャインダブル3度目の達成になりました。
2011年・2014年・2015年・2016年 ノバク・ジョコビッチ
ハードコート歴代最強の男、ジョコビッチはなんと3連覇を含む4回のサンシャインダブルを達成しています。凄すぎて言葉に表せません…
2011年はジョコビッチ躍進の年でしたね。インディアンウェルズではナダルに4-6 6-3 6-2で逆転勝利を収めると、マイアミでナダルと再戦。4-6 6-3 7-6で再び逆転勝利し、サンシャインダブルを達成しました。
14年には、インディアンウェルズでフェデラーに3-6 6-3 7-6で勝利すると、マイアミでナダルに6-3 6-3で勝利。2度目のサンシャインダブルを達成します。
翌年15年はジョコビッチ最強の年でした。インディアンウェルズで昨年と同じくフェデラーと対戦。6-3 6-7 6-2で勝利を収め、続くマイアミではマレーに7-6 4-6 6-0で勝利。3度目2連覇を達成です。
更に翌年16年、インディアンウェルズでラオニッチに6-2 6-0で完勝すると、マイアミでは錦織に6-3 6-3でこちらも完勝。史上初の4度目、3連覇を達成しました。
ちなみに、インディアンウェルズの最多優勝と連覇記録はそれぞれ5勝と3連覇でフェデラーとジョコビッチが所持。マイアミの最多優勝と連覇記録はそれぞれ6勝と3連覇でアガシとジョコビッチが持っています。
両方に名を連ねるジョコビッチはやっぱりハードコート最強の男ですね…
2016年 ビクトリア・アザレンカ
女子3人目の達成者は、グランドスラム2度の優勝を誇るアザレンカです。
インディアンウェルズでグランドスラム23もの優勝を誇るセレナ・ウィリアムズに4-6 6-4 10-6で勝利すると、続くマイアミではグランドスラム2勝のクズネツォワに6-3 6-2で勝利を収め、サンシャインダブルを達成しました。
2022年 イガ・シフォンテク
女子4人目の達成は、現世界ランク1位のシフォンテクです。
インディアンウェルズでは最高世界6位のサッカリに6-4 6-1のストレート勝利を収め、続くマイアミでは、グランドスラム4勝の大阪に6-4 6-0でストレート勝利。男女合わせて11人目のサンシャインダブル達成となりました。
ちなみに、2022年はこの2大会の前のWTA1000・ドーハからこの2大会、更にはクレーシーズンも通り越し、ウィンブルドン3回戦で敗退するまで37連勝を記録しました。
この連勝記録はあのビーナス・ウィリアムズの34連勝、セレナ・ウィリアムズの33連勝をしのぐ記録です。とんでもない記録ですね…
まとめ
というわけで、サンシャインダブルとは何かと、その達成者合計11名を見ていきました。
マイケル・チャンを除き、全員が世界ランク1位経験者で固められていて、いかにこの偉業が達成困難かがわかっていただけたかと思います。
また、あのラファエル・ナダルや、ウィリアムズ姉妹すらも達成していないのはとても意外でしたね。
今後、これを達成できる選手は現れるのか、ジョコビッチの記録した、4度のサンシャインダブル達成という記録を塗り替えることができるのか。注目して見ていただければと思います。
といったところで、今回の記事はここまでです。また別の記事でお会いしましょう~
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